Teacher&Student
学生対談
クリエイティブデザイン学科(グラフィック)
Teacher
武田 伸也先生
グラフィックデザイナー/アートディレクター
Student
馬場 志歩さん
クリエイティブデザイン科2年(福島県立郡山商業高等学校卒)
Student
加藤 琶湖さん
クリエイティブデザイン科3年制2年(仙台市立仙台商業高等学校卒)
Teacher
武田 伸也先生
グラフィックデザイナー/アートディレクター
Student
馬場 志歩さん
クリエイティブデザイン科2年(福島県立郡山商業高等学校卒)
Student
加藤 琶湖さん
クリエイティブデザイン科3年制2年(仙台市立仙台商業高等学校卒)
プロのデザイナーが驚いた「ニチデ」の作品レベル
- インタビュアーA:
- 武田先生は現役のデザイナーとしても活躍されていますが、講師としてニチデの学生たちを客観的に見て、どのような印象をお持ちですか?
- 武田先生:
- 正直に言うと、学生たちが作る作品のレベルは「めっちゃ高いな」と感じています。他校と比較してどうこうと言うより、純粋にクオリティが実務レベルに達しているんです。
- インタビュアーA:
- それは「即戦力」に近いということでしょうか?
- 武田先生:
- そうですね。変に「自己満足のアート」に寄りすぎておらず、デザインの現場に必要な「実務のクオリティ」をしっかり押さえている。現場の新人デザイナーよりよっぽど作れるんじゃないか、という感覚すらあります。実は私も十数年前に一度こちらでお世話になったことがあるのですが、その頃と比べても格段に教育レベルが上がっていて、正直、僕が教えていることがプラスになっているのか引け目を感じるほど、今の環境は完成されていますね。
マーケティングから広告制作まで。それぞれの「原点」
- インタビュアーA:
- 次に、皆さんが「デザイン」という分野に深くのめり込んだきっかけについて、具体的な体験を含めて教えてください。
- 加藤さん:
- 私は商業高校出身で、マーケティングや商品開発を学ぶ機会がありました。部活動や授業で、題材探しから企業交渉、デザイン、販売まで自分たちで行うプロジェクトがあったんです。そこでパッケージやポスターのデザインを任されたのが原点です。最初は「可愛い」「おしゃれ」といったビジュアル優先の考え方だったのですが、実際に販売を経験してみると、自分のこだわりよりも「伝えたい情報が正しく伝わるか」「消費者が何を求めているか」が最優先であることを痛感しました。デザインという手段の自由さと、ロジカルな奥深さに完全に魅せられてしまいました。
- 馬場さん:
- 私は高校2年生の時の「情報リテラシー」という授業で、好きなアイスの広告を作ったのがきっかけです。それまでは高卒で就職と漠然と考えていたのですが、いざ広告を作ってみると楽しくて仕方がなくて。「このままでいいのかな」という思いが強くなりました。幼い頃から絵を描くことが好きだったこともあり、デザインの道にいきつきました。
- インタビュアーA:
- お二人とも商業高校出身という共通点があるのですね。武田先生はどういった経緯でデザイナーに?
- 武田先生:
- 実は、私は最初からグラフィックデザイナーを目指していたわけではないんです。元々は秋田の田舎町から「車のデザイナー(カーデザイン)」になりたいと意気込んで進学したのですが、大学で周りの圧倒的な才能と熱量を目の当たりにして、「これは無理だ」と挫折してしまいました。それでも車に関わりたい一心で、モータースポーツの仕事を受けている印刷会社にデザイナーとして潜り込んだんです。
- インタビュアーA:
- 挫折からのスタートだったのですね。
- 武田先生:
- そうです。デザイン学科卒ではありましたが、当時はMacも触れないしDTPの知識もゼロ。センスがない自覚があったので、せめて「作業の早さ」だけで生き残ろうと必死でした。そこから上司に揉まれ、現場で泥臭く経験を積むうちに、いつの間にかグラフィックデザイナーとして出来上がっていた。
- 失敗、葛藤、そして:
- 心の余白」
「大丈夫、印刷物では人は死なないから」
- インタビュアーA:
- 学生生活の中でも、あるいはプロの現場でも、順風満帆なときばかりではないと思います。これまでの大きな失敗や、そこから得た教訓について聞かせてください。
- 馬場さん:
- 私は2年生の前期、キャパオーバーになってしまったのが最大の失敗でした。日々の課題に加え、卒制のプレゼン、さらには就職活動が一度に押し寄せてきて、心がいっぱいになってしまったんです。デザインって、本来は何度も試行錯誤してアイディアを練るのが楽しいはずなのに、余裕がなくなると「これがいい」ではなく「これでいいや」と妥協するようになってしまって。そこから学んだのは「心に余白を作る」ことの大切さです。
- インタビュアーA:
- 忙しさに心を削られてしまったんですね。そこからどう立ち直ったのですか?
- 馬場さん:
- 精神論かもしれませんが、「昨日よりは一歩進んでいるから大丈夫」と自分に言い聞かせて、今日やるべきことだけに集中するようにしました。スケジュールを可視化することで、またデザインに向き合う力が湧いてくるようになりました。
- 武田先生:
- 課題に卒制、就活……。僕も経験があるけれど、そういう時はまず「書き出す」ことが大事。一個ずつやらなきゃいけないことを書き出して、締め切りを明確にする。いわゆるスケジュール管理だね。
- インタビュアーA:
- そうですね。
- 武田先生:
- 「一週間の予定」を立ててみて、「こっからここまではこれをやればいい」「その次はこれ」と決めていく。そうすると、意外と余裕を持ってクリアできたりするものなんだよ。「一週間で5個やらなきゃ」と思うと気が重くなるけれど、「今日一個、明日一個」と分ければ印象が全然違う。モチベーションの維持の仕方が変わってくるんだよね。
- インタビュアーA:
- 確かに、視覚化すると少し安心します。
- 武田先生:
- あとは、やっていくうちに「あー、もうダメだ」と行き詰まることもあるじゃない? いわゆるゲシュタルト崩壊みたいな。
- 一同:
- あー、あります(笑)。
- 武田先生:
- そういう時は「もういいやっ」と割り切って、翌日まで寝かせて次のことに飛べばいい。締め切りは絶対だけれど、一旦寝かせて別の作業を進めることで、頭の切り替えができていく。僕も会社員時代、後輩が「忙しすぎてできません」と泣きついてきた時、よく「書き出してみ?」と言っていたんだ。「これに何時間かかるの?」と具体的に整理していくと、「あれ、意外と余裕じゃん」「あ、本当っすね」となることがよくある。一度やってみる価値はあると思うよ。
- インタビュアーA:
- ありがとうございます。勉強になります。では加藤さんお願いします。
- 加藤さん:
- 私は3年生コースで、周りの2年生が就活で忙しくしている中、自分には時間がある分、「絶対に遅れてはいけない、頑張らなきゃ」と自分を追い込みすぎてしまいました。4月から7月頃までは課題を終わらせること自体が目的になってしまい、全然楽しくなくなってしまって……。でも10月頃、思い切って一度課題の手を止め、外の世界を観察する時間を作ったんです。すると街中のポスターや商品がすべて新鮮に見えてきて、「やっぱりデザインが好きだ」という気持ちを再確認できました。詰め込みすぎず、気を抜くことも長く続けるためには不可欠なスキルなんだなと学びました。
- 武田先生:
- いっぱいいっぱいになって休憩を取るのは、すごく大事なこと。ただ、グラフィックデザイナーとしてやっていく以上、締め切りは必ずくるし、遅れないことが一番大事。その中で「時間がない、出さなきゃいけない、でも納得できない」という状況は、社会人になっても必ずある。だからそこは、自分を責めすぎなくていいと思うんだ。
- インタビュアーA:
- プロでも納得いかないまま出すことはあるのですか?
- 武田先生:
- ありますよ。妥協とは違うけれど、100%を目指してやる必要はあっても、現実に100%は無理。それは未だに僕にだって無理なんです。だから、今回は70%しかできなかったとしても、次は75%、その次は80%にしようと積み上げていければ全然OK。そこに気づけている二人はすごいと思うよ。
- インタビュアーA:
- 精神的な回復やインプットについてはどうですか?
- 武田先生:
- 街中をブラブラ歩くのはプラスになりますね。僕も会社員の時、勉強しに行くなんて意気込みはゼロで、ただ遊びに東京へ行っていた時期がありました。「今日は恵比寿」「今日は新宿」ってただ遊ぶだけ。それを1、2年続けていたら、仙台にはない刺激が知らず知らずのうちに仕事に反映されて、周りから「武田くん変わったよね」と言われるようになった。学びに行こうと堅苦しく考えるより、休憩のつもりで違う刺激を取り入れるのがいい。ゆったりと普段見ないものを見るのは、すごくプラスになります。
- インタビュアーA:
- ちなみに、武田先生自身の現場での失敗談もお聞きしたいのですが……。
- 武田先生:
- いや、失敗は山のようにありますよ(笑)。日付や曜日を間違えるなんていうのはザラで。業界用語で「ヤレを出す」って言うんですけど、印刷ミスで何万枚という刷り物が一発でパーになる。それをリカバーするために、ちっちゃい訂正シールをひたすら貼ったり、マッキーで消したり、消しゴムで汚れを消したり……。
- 一同:
- えぇー……(笑)。
- 武田先生:
- こういうことは必ず一度は経験するから、覚悟しておいたほうがいい(笑)。大事なのは「見直す」という基本。でも、もしミスをして何十万という赤字が出て、上司に怒られて「あぁー……」って落ち込んでも、これだけは覚えておいて。「大丈夫、印刷物では人は死なないから」。
- 一同:
- 確かに!(笑)
- 武田先生:
- 安心して、しっかり反省して、次はなくそうと努力する。その繰り返しでいいんです。
- なぜ:
- グラフィック」なのか。紙の持つ力
- インタビュアーA:
- 今はWebデザインやSNSの需要が非常に高い時代ですが、お二人はなぜ「グラフィック(紙媒体)」を選んだのでしょうか。
- 加藤さん:
- 私はシンプルに、紙媒体の「手に残る質感」が好きなんです。Webはいつかデータが消えてしまうかもしれませんが、紙媒体はそこに存在し続け、思い出と一緒に物理的に残ります。幼い頃、街中のカタログを切り抜いてスクラップしていた頃のワクワク感が、今の原点にあります。
- 馬場さん:
- 私はとにかく「パッケージデザイン」を極めたかったからです。業界の流れとしてWebの需要が高いことは分かっていましたが、せっかく専門学校に来たのなら、自分の「一番好きなもの」に時間を使いたいと思いました。
- インタビュアーA:
- 武田先生から見て、グラフィックデザイナーに向いているのはどんな人だと思いますか?
- 武田先生:
- 意外かもしれませんが、「こだわりすぎない人」ですね。デザイナーはアーティストではなく、お客様の要望におまけ(付加価値)をつけてお返しする仕事です。お客様が「青」を求めているなら、その中で最高の答えを出す。柔軟に別の可能性を提案できる人が、長く信頼されるデザイナーになれると思います。
未来の後輩たちへのエール
- インタビュアーA:
- 最後に、これからデザインを志す高校生へのアドバイスをお願いします。
- 加藤さん:
- 専門学校での2〜3年という時間は、決して短くありません。お金も時間も費やすものなので「なんとなくこれでいいかな」という気持ちでは入らないほうがいい。学費や機材費など親にも負担をかけるからこそ、入る前にデザインについて知識をさらっとでも得ておき、入ったからには「やり切る」という覚悟を持ってほしいです。
- 馬場さん:
- 私は2〜3年は「短い」と感じていて、ここが勝負の時間だと思っています。だからこそ、自分が納得して「ここがいい、ここで努力したい」と思える学校をしっかり選んでほしい。どの学校へ行っても学ぶ内容に大差はないかもしれませんが、「自分がここで学ぶんだ」と決めた環境でどれだけ努力できるかが、一番の成長に繋がります。
- 武田先生:
- 二人ともしっかりした思いがあるけれど、僕は「ちょっと好き」くらいの気持ちで入ってきてもいいと思う。高校でデザインを学んでいる人は少ないから、スタートはみんな同じ。わからないことを聞くのを恥ずかしがらないでほしい。実際、この二人は遠慮せず質問に来てくれました。そういう子が伸びます。ついていけるか心配する必要はありません、僕たちがついて行かせますから大丈夫です(笑)。
感謝とお互いへのエール
- インタビュアーA:
- 心強いですね。最後に、学生さんから先生への感謝と、先生はお二人に対して一言エールをいただければなと思います。
- 馬場さん:
- 武田先生、いつも親身なご指導をありがとうございます。先生のアドバイスは、視界をスッと広げてくれる「お守り」のようなものです。これからも大切にしていきたいと思います。
- 加藤さん:
- 先生のおかげでデザインの視野が劇的に広がりました。朝日広告賞などの挑戦を通じて得た学びを、来年にも活かしていきたいです。
- 武田先生:
- デザインは真面目に取り組むのはもちろんですが、実は「真面目にふざける」のも面白い仕事です。遊び心を持って世の中を動かす楽しさもあります。最初は「デザイナー」という肩書きが誇らしいですが、数年経つと実力が伴わず恥ずかしくなる時期がくる。そう感じたときこそが、本当の成長のチャンスです。あまり堅苦しくならず、メリハリを大切にして、この仕事を楽しんでほしい。二人の未来を楽しみにしています。
- インタビュアーA:
- 素晴らしいお話をありがとうございました。