Teacher&Student
学生対談
コミックイラスト科

Teacher

伊藤 睦実先生

イラストレーター

署名:伊藤 睦実先生

Student

相原 美友さん

コミックイラスト科2年(東日本国際大学附属昌平高等学校卒)

署名:相原 美友さん

Student

志濟 蒼市さん

コミックイラスト科2年(山形県立山形中央高等学校卒)

署名:志濟 蒼市さん

写真:コミックイラスト科 学生対談

最近、刺激を受けた作品やイラストレーター

インタビュアーA:
今日はよろしくお願いします。まず最初の話題として、皆さんがクリエイターとしてアンテナを張っているものについて伺いたいのですが、「最近お互いが刺激を受けた作品や、イラストレーターさん」はありますか?
志濟さん:
ここ1年くらいですが、『アニメのワンシーンのように』という写真集ですね。日常の風景をアニメのワンシーンのように切り取った作品で、その構図などを自分の絵の参考にしています。
相原さん:
私はゲームの『18TRIP(エイティーントリップ)』ですね。イラストレーターの「およ先生」の絵柄に影響を受けています。2年生の最初のトレース課題でおよ先生のイラストをしたのですが、ただ明度や彩度を下げるだけではない色使いがとにかくすごくて、とても参考になります。
インタビュアーA:
お二人の話を聞いていると、プロの視点を積極的に取り入れているのがわかりますね。先生、その「トレース課題」には、具体的にどのような指導意図があるのでしょうか?
伊藤先生:
卒業制作を前に、プロがどこまで観察して描いているか、色の境界をどう処理しているかを見てほしくて出している課題です。自分がなあなあにしがちな細部をプロがどう詰めているか、それを認識してもらうためですね。
相原さん:
そのおかげで、卒業制作でも活かせる部分がたくさんありました。
伊藤先生:
私はX(旧Twitter)などで流れてくる作品の「良いところ」を見つけるのが刺激になります。名前がわからなくても、自分が描きたくても描けない表現を上手く描いている人の作品をブックマークして、後から見返したりしています。
インタビュアーA:
先生でもやはり、日々の練習は欠かさないのですか。
伊藤先生:
しますね。最近は「手」をしっかり描きたいので、『モルフォ人体デッサン』という本を見て模写の練習をしています。

課題の締め切りとプロの納期

写真:コミックイラスト科 学生対談
インタビュアーA:
それでは次の質問です。「課題の締め切りや、プロとして時間を守ることへの意識」について。学校に入ってからどのように変化しましたか?
相原さん:
締め切りを守ることは大事なので、絶対に間に合うように最初から動いています。先生からの添削も受けたいので、締め切りの1日前くらいには一応完成まで持っていって、先生に見てもらってから出すようにしています。
志濟さん:
僕は入学前まで、夏休みの課題を31日にやるタイプだったんですけど(笑)。この学校に入ってからは締め切りを意識して、逆算して計画を立てるようになりました。
相原さん:
私は逆に、昔から初日にババッてやっちゃうタイプでしたね(笑)。
伊藤先生:
私は満遍なくやるタイプでした。でも仕事になってからは、クオリティが追いつかないときがあるので、自分で調整するようになりました。実は、学生時代はギリギリタイプだったんですけどね(笑)。
インタビュアーA:
先生でも学生時代はそうだったんですね。実際にプロの現場に出てから、お仕事での失敗談などはありますか?
伊藤先生:
1回、2日徹夜しても終わらなかったことがあります。物量を甘く見積もってしまって、手間の掛かる小物の入った背景だったんですが、「すみません、ここまでしか……」と言ったことがありました。寛容なクライアントさんで助かりましたが、物量の見積もりは本当に大事だと痛感しました。

5年後・10年後の業界とAI

写真:コミックイラスト科 学生対談
インタビュアーA:
現場のシビアな話が出ましたが、未来に目を向けるとさらに不透明な部分もあります。これからの「5年後、10年後の業界」はどうなっていると思いますか?
相原さん:
AIに仕事を奪われないことが一番いいなと思います。今はXのブロック機能などが問題になっていて絵師さんの幅が狭まっていますが、上手い具合にAIと共存できる世の中になればいいなと。ちなみに、履歴書の制作の時に、文章を自分で考えてからAIに添削してもらうような使い方はしています。あとはイラストのお題が浮かばない時にAIに考えてもらうこともあります。
志濟さん:
僕はあんまり変わらないんじゃないかなと思っています。2016年と今を比べてもベースはそんなに変わっていないので、新しい技術とは上手く付き合っていくのが一番いいのかなと。
伊藤先生:
作り手がちゃんと尊重される状態が続いているといいですね。仕事でも「AIを一切使わないで」という方と「効率化のために使っていい」という方の二極化が進んでいますが、私はやはり描き手を尊重してくれる方の仕事のほうが、モチベーションも含めて印象が良いなと感じます。

モチベーションの保ち方

写真:コミックイラスト科 学生対談
インタビュアーA:
貴重なお話をありがとうございます。続いてのテーマは、仕事として「好き」を続けることの難しさとやりがいについてです。プロとして活動されている伊藤先生には、実体験からお話しいただけると思います。学生のお二人は、プロの方や先生のお話から「仕事ならではの難しさ」をどう想像しているか、あるいは自分を振り返って「必ずしも自分の好みではないテーマを描かなければならない時、どうモチベーションを保ち、どこに面白さを見出しているか」といった点を聞かせてください。
伊藤先生:
私は「タイヤ」を描くのが本当に苦手で(笑)。仕事で来ると大変ですが、F1を見たりしてその格好良さを知ると、「ここまでのクオリティには持っていきたい」という自分なりの基準ができるんです。苦手なものが来ても、そのかっこいいところを見つけて、少しでも楽しめるようにして向き合っています。
相原さん:
私は「アニメ塗り」が苦手でした。進級制作で指定されたときは苦痛でしたが、仕事になればどんな塗りでもできたほうがいいので、得意な人にコツを聞いたりして、苦手といかに向き合うかが大事だと思っています。
インタビュアーA:
逆に、本当に描きたくないと思うほど折れてしまった時、どうモチベーションを維持していますか?
相原さん:
卒業制作の時、スランプになって「もう書けない!」となったことがありました。 その時は、先生方にアドバイスをいただきました。 伊藤先生に相談したら「私は書くかな」と言われて、「あ、やっぱ書くしかないっすよね!」と(笑)。 ひたすら書き続けるしかないという意地と根性でやり抜けました。
インタビュアーA:
結構精神論というか、脳筋タイプで向かっていく感じですね。
相原さん:
そうなんです。色々考えずに、どうせやらなきゃいけないんだからやるしかない、という感じです。
志濟さん:
僕は「人工物」を描くのが苦手ですが、楽しんで向き合う姿勢を持つようにしています。一度やめて次の日に気持ちを切り替えてやると、案外いけたりします。
伊藤先生:
昨日「最高!」と思って寝て、次の日見ると「ダメじゃん!」となる、あの繰り返しだよね(笑)。でも、ずっと描き続けて完成しないのも良くないので、どこかで区切りをつけて完成させる力も必要だと思っています。
相原さん:
たまに初心に帰って、「あの時こういうの楽しかったなー」と思い返しながら過去の絵を見たりもしていますね。

ニチデでの日々

インタビュアーA:
お話を聞いていると、技術だけでなく精神的な成長も感じます。改めて、ニチデで過ごす中で「楽しい」と感じることはどんなことですか?
相原さん:
一番は「オタクと話せること」です! 気が合う人がいっぱい周りにいて、これまでの学生生活の中でも、今が一番楽しいです。
志濟さん:
周りにオタクしかいないし、共通項で話が合うのが楽しいです。サークル活動で他の科の人とも話せますし、男子同士でダーツに行ったり、遊べる仲間ができたのも嬉しいですね。

お互いへのメッセージと感謝

インタビュアーA:
それでは、伊藤先生からお二人へのエールをお願いします。
伊藤先生:
これからイラストの道に進むかどうかは分かりませんが(笑)、楽しくこれからもお絵描きをしていってください。SNSを見ると比較対象がいっぱいいますが、自分が楽しいと思って描いたイラストはそれ自体が大切なものです。人の評価を気にしすぎず、好きなものを描いたときはそれでいいんだと自分を認めてあげてください。凹むときもありますが、描き続けることが大事です。
インタビュアーA:
お二人は仕事として絵を描きたいという希望はありますか?
相原さん:
そうですね、できたら描きたいと思っていて、有償依頼などを受け付けて活動したいです。就活を通じて、会社に入るハードルの高さを実感したので、今は個人で依頼を受けるほうが一歩目を踏み出しやすいかなと感じています。
伊藤先生:
自分のペースで活動の幅を広げて、やりがいを持って取り組んでください。
インタビュアーA:
続いて、志濟くんから先生へ。
志濟さん:
はい。卒制などでアドバイスをいただくことが多く、本当に助かりました。言葉にするのは難しいですが、めちゃめちゃお世話になりました。ありがとうございます。
伊藤先生:
志濟くんは1年生の頃「人工物が苦手」と言っていたけれど、タイルやジャングルジムをすごく丁寧に描いていましたよね。背景イラストで見せてくれた線路の遮断機や、卒制のカーブミラーといった着眼点が私はすごく好きでした。そういう独自の視点をこれからも失わずにいてほしいです。
インタビュアーA:
それでは最後に、相原さんから先生へ。
相原さん:
私は1年生の「デジイラ(デジタルイラスト)」の頃から、本当にお世話になりました。特に卒制の「クマちゃん」ですね。毛並みのふわふわした質感の出し方を、伊藤先生が本当に丁寧に、根気強く教えてくださったんです。モコモコやフリルの描き込みは、何度も直していただいて……。
伊藤先生:
フリルは3回以上、クマちゃんはそれ以上に渡ってリテイクを出したけれど、嫌な顔一つせず向き合ってくれましたよね。その結果、とても良い作品になったと思います。後から気づいた細かな点まで粘り強く修正して、よく頑張りました。
相原さん:
ありがとうございます! 伊藤先生のおかげで納得のいく形にできました。

高校生へのメッセージ

インタビュアーA:
最後に、この業界を目指している後輩たちへ。これからニチデやイラストの世界を目指す高校生へメッセージをお願いします。
伊藤先生:
「版権」だけでなく「オリジナル」をしっかり描けるようになってください。ポートフォリオではそこが評価されます。あと、学校の勉強も実は大切です。世界史や倫理などの知識が、イラストの世界観や説得力の幅を広げてくれるので、色んなことに興味を持ってほしいです。技術的なことは、とにかく本物をじっくり見て描く練習をしてください。
志濟さん:
どうせやるなら、自分が後悔しないような選択をしたほうがいいと思います。やりたいと思ったことは、素直に挑戦してみてください。
相原さん:
イラストを楽しむことを一番に。そして、食わず嫌いせず色んな作品に触れて、自分の引き出しを増やしておくと、より楽しく描けるようになると思います!
インタビュアーA:
現場のリアルな空気感が伝わる、熱いお話をありがとうございました。
全員:
ありがとうございました!