マンガ家
佐々野まりえさん
卒業生インタビュー
宮城県仙台西高等学校卒。
2018年3月フランスにて「モモとタイヨウノツカイ:Momo et le messager du Soleil(仏名)」を漫画専門出版社Ki-oonより発売(全4巻)。
日本未発売著書。LINEマンガにて「夕暮れクリスタル」連載。2025年3月に「Switch Family」をフランスで出版。夫婦での共同制作。
プロフィールと現在の活動:講師と漫画家の「二足のわらじ」
- 当校広報担当
- お仕事はずっとお家でされてるんですか?
- 佐々野さん:
- はい、ほとんど自宅ですね。家でマンガを描きつつ、それと並行して、今は高校や大学でも少し講師をしてます。
- 当校広報担当:
- 講師と漫画家、まさに二足のわらじで活動されているんですね。
締め切りが教えてくれたプロの自覚
- 当校広報担当:
- それでは、最初の質問ですが、専門学校に入学したとき、最初に“プロになる”実感が湧いた瞬間はいつですか?
- 佐々野さん:
-
仕事をする上で締め切りが大事だと教わった時だと思います。高校生の時にマンガ部に所属していて「この日までには作りたいよね」という感覚はあったんですが、その程度しかなかったですし(笑)
ニチデに入学してから、『学校の課題の締め切り』としてではなく“仕事だったら”というのを意識して提出するようになりました。 - 当校広報担当:
- 高校までふんわりしていた〆切への意識が、ニチデでの授業を経て、プロの世界には「絶対この日」という〆切があることを実感されたんですね。
- 佐々野さん:
-
そうですね。そして、実際に仕事になってから余計に締め切りの大事さを実感するようになりました。
嫌がられることの多い締め切りですけど、作品を「作り終わらせる」という意味でも締め切りは必要なものだと思っています。
ニチデでは先生方が常に、仕事になってから困らないようにという想いで教えて下さってたので、どの授業でもプロになった時のことを意識させてくれていたんだと思います。 - 当校広報担当:
- ニチデは課題が多い学校と言われていますが、実際厳しかったですか?
- 佐々野さん:
- 全然大丈夫でしたね。元々真面目なタイプだったので(笑)
- 当校広報担当:
- その真面目さがあるからこそ、今プロとして活躍されているわけですね。
- 佐々野さん:
- いや、単に怒られるのが嫌だっただけです(笑)私自身怒られるのが嫌だったので「怒られる前にちゃんとやる」と思って描いていました。それに課題自体は楽しいので。描くのも好きですし全部苦ではなく、楽しかったです。
描くことが当たり前の環境で繋いだ夢
- 当校広報担当:
- そもそも最初に漫画家になろうと思ったきっかけは何でしょうか?
- 佐々野さん:
-
きっかけは高校でマンガ部に入ったことだと思います。元々描くのは好きだったんですけど、高校の時に入部したマンガ部で先輩方がマンガ家を意識して書いている人たちばかりだったのでその辺りで意識するようになり、ニチデに入ると決めたあたりで「マンガ家がいいな」と思うようになりました。
あと、昔読んでいた『りぼん』というマンガ雑誌で中学生でデビューしている方がいらっしゃって、それが気になったのも、一つの要因としてあると思います。 - 当校広報担当:
- 昔は本当にデビューが早かったですよね。高校生作家も珍しくありませんでした。
- 佐々野さん:
- そうですよね。
- 当校広報担当:
- そこから実際にプロになったのですから、やはり素晴らしいです。
- 佐々野さん:
-
いえいえ、私は結構時間がかかった方ですよ。実は、デビューするまでに10年くらいかかっていまして。卒業してしばらく経ってから、なんなら子供を産んでからデビューしました。それまでの10年間はアシスタントをしながら、持ち込みや投稿を続けていました。
一度も賞を獲れない時期もありましたが、主人も一緒に漫画を描いていたので、周りに似た環境の人がたくさんいたんです。だから、10年かかることもあまり深刻に考えずに進んでこれたんだと思います。 - 当校広報担当:
- 環境が当たり前だったのは大きいですね。
- 佐々野さん:
- 周りにいすぎましたね(笑)全員が描いているような環境だったので。
創作の引き出しー「知りすぎること」と「学び」のバランス
- 当校広報担当:
- ちょっと特殊な環境ですよね。では次に、「学生のうちにもっとやっておけばよかった」と感じることはありますか?
- 佐々野さん:
-
勉強ですね。「もっと知識があったら難しいストーリーも作れるのに」とか「もっと早くキャラクターを作ることが出来るのに」と思うことがよくあります…。
キャラクター作りでも、頭のいいキャラクターは難しいですね。
絵の知識は自主的に学ぶと思いますが、それ以外の知識もなるべく持っておくと幅が広がると思います。 - 当校広報担当:
- なるほど。特にマンガ家は作中の世界の全てを作ることになるので、マンガ以外の知識も沢山あった方がいいですよね。
- 佐々野さん:
-
そうですね。本当はマンガ以外の趣味があるといいんですが、私もあまり無いので苦労してます…。
だから、いずれマンガに活用できるように知識や経験を増やしておくと良いと思います。同じ意味でアルバイトもそうですね。経験したことがある仕事はストーリーに入れやすいので、可能であればアルバイトもやるに越したことはないです。
課題がちゃんと期日に出せるのであれば、いろいろ挑戦するのは大事だと思います。いずれデビューして新連載を考えるときに編集者の方に「何か得意なこと(経験を活かせそうなストーリー)はありますか?」と聞かれることがあるんですが、その時に自分の中に経験が何もないと「無いな〜」ってなってしまいますしね。
経験が強みにもなれば…。
- 当校広報担当:
- 経験の引き出しがそのままストーリーになるわけですね。では逆に役に立った経験などはありますか?
- 佐々野さん:
-
子育てですかね。デビュー作の『モモとタイヨウノツカイ』は子供が生まれてから描いたお話なのでそこは描きやすかったです。
ただ今度は子供を可哀想にすることがストーリーの中でも出来なくなってしまいました。子供が虐げられているシーンとか見るのも辛いです。なので、学生のうちだとしがらみが少なく、描けるストーリーも多いような気がしますね。経験が逆に枷になる時はあるのかなと思います。気にしない人もいると思うけど私は気にしちゃうタイプでした。
デビューまで10年。諦めたくなかったから続けられた。
- 当校広報担当:
- 経験が作品の幅を広げる一方で、制約になることもあるんですね。では次に、デビューまでに一番苦労したこと、またはそれを乗り越えたきっかけを教えてください。
- 佐々野さん:
-
先ほども言った通り、私、デビューまで10年くらいかかっていまして。
ニチデを卒業して子供が産まれてからだったんで長かったんです。その間アシスタントとマンガの投稿と持ち込みを行いつつマンガ賞も一回も獲れなかったんです。 - 当校広報担当:
- その10年という長期間、モチベーションを維持できたのは?
- 佐々野さん:
- ただ私自身、諦めることが嫌すぎて続けられたと思いますし、主人や友人やアシスタント先もみんなマンガを描いていて、身近な存在に沢山そういう方がいたからあまりそこは考えずに10年経っていましたね。結局デビューする時も賞は獲ってないんですが、賞はこれから獲るかもしれないので引き続き頑張りたいですね!
アシスタントの経験と、母校(ニチデ)というプラットフォーム
- 当校広報担当:
- 周囲の環境や「諦めたくない」という強い思いが支えだったのですね。ちなみにアシスタントはどんな経緯でされていたんですか?
- 佐々野さん:
-
最初ニチデとは関係の無い先生のところでさせていただいていたんですけど、先に入っていたアシスタントの先輩がニチデ出身の方で、そのきっかけで学校にアシスタント募集が来て、私がそれに応募しました。
その経験があったので私もアシスタントが欲しい時は「ニチデに頼めばいいんだ」と思うようになっていて。ニチデが一つのプラットフォームのようになっていましたね。
特に講師の内崎幸先生がいつも優秀な学生を見つけてくれて本当に感謝してます…!
あと内崎幸先生はデビューしたときにお花をくださって、今でも大事に飾らせてもらっています。
子育てと両立する現場のリアル
- 当校広報担当:
- 母校との素敵な繋がりですね。「プロってこういうことか…!」と感じた瞬間があれば教えてください。
- 佐々野さん:
-
アシスタント時代に学んだことですが「締め切りに間に合わせることが最優先」ということです。
自分で納得がいく仕上がりになってなくても、とにかく編集者さんに渡さなきゃいけない。これは最低限やらなきゃいけないけど「これはやらなくていい!とにかく終わらせて渡す!」という時があって、これは学生時代の課題だとあまりないことかなと思いました。
納得のいくものにしたかったら作業スピードを上げなきゃいけないんだと気付いて、どうやったら時短になるかも意識するようになりました。 - 当校広報担当:
- 「締め切りは絶対」というプロの現場の厳しさですね。
- 佐々野さん:
-
ただ、時間を決めて作業をしたいなと私も思ってはいるのですが、どうしてもそこに子供のことが入ってくるので訳分からなくなる時はあります(笑)
家では家事を全般やっているので、子供が16時くらいに帰ってきて、習い事があるのでそれまでに夜ご飯食べさせて、習い事までの間に宿題もやらせて、最後送り迎えもして…。
みたいな感じですね。
締め切り前とかだと忙しいので夜ご飯を買ってくる時もあるんですけど、基本はこんな感じですね。 - 当校広報担当:
- 話を聞くだけでも、かなりハードです…。
- 佐々野さん:
- でも、別にマンガ家だから締め切りが、という話ではなくて、どの仕事にも締め切りはあるなとも思っています。どの仕事でも結局ひとつひとつに「この日までにやって」という期日があると思うからマンガに関わらず全ての仕事で意識してやったほうが楽だと、と講師している時に話していましたね。
締め切りギリギリまで動けないクセを絶賛克服中
- 当校広報担当:
- どんな仕事でも納期を守ることが基本ということですね。今でも苦手だと感じることや、克服中のことはありますか?
- 佐々野さん:
-
こんなに締め切りの話をしていますが、締め切りギリギリまでやり始めないクセを克服中です(笑)
ある程度慣れてくると「このページ数なら何日あれば完成する」という感覚ができてしまって、その日数まで他のことを優先させてしまうんですよね。
私の場合子供もいるので、忙しくなる前にあれこれやろうと思うと、気付けばギリギリになってます。ただ、早めに始めて「今回は余裕あるな」と思ってても、結局ギリギリになってるんですよね。不思議です(笑)
偶然のタイミングが手繰り寄せた、フランスでの出版
- 当校広報担当:
-
スケジュール管理の難しさはプロでも尽きない悩みなんですね。
ではデビューした時のお話をお聞きしたいのですが、デビューがフランスだったと伺っているのですが、なぜフランスだったんですか? - 佐々野さん:
-
主人が教論で行っている高校の方にプロアマ問わないマンガ賞の募集が来ていて、そのチラシを持ってきてくれてたんです。
「誰も出さないんだよね」と言っていたので「じゃあ私が過去に描いた作品を出してみようかな」と出してみたら上位の順位に入ったので東京に呼ばれたんです。 - 当校広報担当:
- な、なんと、運命的ですね…!
- 佐々野さん:
-
そこが合同のマンガ作品持ち込み会みたいな会場で、フランスの出版社もあったので「お!」と思って行ってみたんです。
そしたら色々お話しして「子供がいるんです」って言ったら、そこの会社のオリジナルマンガを作りたい時期だったらしく、戦闘シーンとかが無い子供向けのやつが作りたかったそうで「子供がいるんだったら子供向けはどうですか?」と言われて「よっしゃ!」となったって感じです。 - 当校広報担当:
- それは息子さんあってのお話…。
- 佐々野さん:
- そうなんですよ。だから、主人や子供がいなかったらこうならなかった話なので、本当にタイミングがぴったりだったな、と思っています。
フランスでのデビューとサイン会。家族に届いた喜び
- 当校広報担当:
- 偶然というか、運命というか。ご家族の存在が導いた素敵なお話ですね。ちなみに、初めて自分の作品が世の中に出た時はどんな気持ちでしたか?
- 佐々野さん:
-
初めて本が並んでるのを見たのが、フランスでのサイン会の時でした。JAPAN EXPOみたいな感じでだいぶ大きくやってくれて「デビューでこれをやってもらえる人はいないだろうな。凄いな海外」とびっくりした記憶があります。
デビュー作でフランスでサイン会させてもらえるなんて、まずそれが凄すぎて、自分が感動してるのかどうかよくわからなかったです。
でもその様子を見て、主人が泣いて喜んでくれたり、子供が私のサインをもらいに並んでくれたりして、出版できたことも嬉しかったけど、家族にこの様子を見せれたことが特に嬉しかったです。
あと最近だと日本語訳で読めるようになったアプリがあって、今までフランス語訳のものしかなかったんですが、日本語訳のやつが読めるようになったんです。今まで誰も読めなかったからすごい良いタイミングでした。
今しかできない高校生活を楽しみ、人に見せる挑戦を!
- 当校広報担当:
-
ご家族の温かいリアクション、感動的ですね!
それではプロになった今だからこそ伝えたい「高校生のうちにやっておくと得すること」と、同じ業界を目指す高校生へのメッセージをお願いします! - 佐々野さん:
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漫画家を目指すのであれば、高校生のうちに投稿や持ち込みをしてみて欲しいです。私自身がやってこなかったので「高校生の時にやっておけばよかったのに」とずっと思っていたからでもあります。多分編集部的にも高校生の時からの方が教えやすいと思いますし、高校生の時期にやれる時間があるなら、挑戦できる環境があるなら良いんじゃないかなと思います。
また自分の作品を人に見られる感覚に慣れておくのも大事です。今は前よりも結構SNSに出しやすくなっているから人に見せるのは前よりハードル低いんじゃ無いかなとも思います。でも1番大事なのは、「高校生活を楽しむ」ことです!
卒業するまでに「高校生」をしっかり経験しておきましょう! - 当校広報担当:
- 経験の積み重ねやプロのリアルな裏側まで、味わい深いお話をありがとうございました!
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